老人ホームに入居しているシニアの皆さんにとって、ピアノ演奏はとても素敵なイベントで楽しいものです。実際に、レクリエーションやイベントで開催されるピアノ演奏にはどのようなものがあるのでしょうか。
ピアノの音色を聴くメリットや皆さんの反応についても紹介します。あちこちの老人ホームで、こうした演奏会が増えると良いですね。
ピアノは繊細な響きを奏でることができる楽器です。ドラムのように激しく響く音でもなく、トランペットのように高鳴る音でもありません。勿論、力強く弾く曲もありますが、静かにちょうど良い程度の音量で室内に広がる素敵な音色です。
またピアノは両手でメロディーを弾くことができて、みんながよく知っている曲も演奏できます。練習曲などは別として、ピアノ曲の多くはポピュラーで耳にしたことがあるものも多いでしょう。ドラムやカスタネット、ベースなどはメロディー演奏をするのはなかなか難しいです。
それに対してピアノは、1つの楽器でメロディーラインが実現するのも特徴的です。このように、音色の音量や響き方、メロディーを演奏できるといった点は老人ホームでの演奏にとても適しています。高齢者の中には大きな音は苦手な人も見られます。
ピアノであれば心地良く聴くことができる音色のはずです。よく知っている曲の演奏であれば、入居者のみんなも興味を持って聴くことができます。童謡などは懐かしいですし、紅白歌合戦で歌われるような歌謡なら思わず口ずさんでしまう人もいるかもしれませんね。
みんなが楽しく聞き入ることができるのも、施設にピアノが向いている点と言えるのではないでしょうか。
我が家の体験談になりますが、祖父母が老人ホームに入居しています。大きな施設で、ロビーにて時折いろいろなイベントが開催されるのです。何かしらイベントに参加できる人も募集しています。私の母は趣味でジャズをしているのですが、この募集を見てジャズライブをするのはどうかと言い出しました。
有名なジャズピアニストの先生のもとでジャズレッスンに行っています。その先生のピアノ演奏に合わせて、ジャズを歌うライブです。選曲次第では、祖父母をはじめ入居者のみんなが知っている懐かしい曲も多々あります。
行動的な母は、さっそくいろいろと計画を立て始めました。老人ホームのスタッフにその旨を話すと、とても興味を持ってくれて是非ともお願いしますとのことでした。ピアノとマイクがあれば実現するライブです。準備もそれほど要らないですし、施設でのイベントとしてとても適していると言ってくれました。
ピアノの先生も大賛成で、母も練習に力が入ったようです。選曲については私も相談に乗りました。クリスマス時期に開くということで、クリスマスソングをはじめ、オズの魔法使いの『オーバーザレインボー』なども歌うことになりました。
イベント当日、施設のロビーには椅子が並べられて入居者の皆さんが座ります。祖父母も恥ずかしそうに、自分の娘の演奏を見守っていました。ジャズライブが始まると、みんな思い思いに聴いています。肩を揺らしてリズムに乗っているおばあちゃんもいれば、涙目になっている人もいます。
知っている曲になると一緒に歌っている人も、とにかくみんなそれぞれ楽しそうで幸せそうでした。祖父母も、ドレスを着て歌う母の姿に感動したようで、大きな拍手をしていました。途中で先生の紹介のときに、ジャズピアニストならではのソロ演奏をしてくれたのですが、それはもう素晴らしいものです。
私も息を飲んで聞き入ってしまいました。繊細で時には強いピアノの音色が、施設に響き渡って感動的です。ホーム全体が一団となったように感じた時間でした。施設スタッフに、「またお願いします」と後で言われて母もピアノの先生も照れ笑いをしていました。
祖父母が入居している老人ホームでは、ピアノリサイタルも行われました。そのエリアのピアノの講師を招いての演奏会です。地元では有名な先生のようで、施設でコーラスサークルの指導もしてくれている人です。私も興味があったので、聴きに行きました。
大きなコンサート会場とかではなく小規模な老人ホームでのリサイタルにも関わらず、ものすごいドレスアップをするところもまた素敵だと思いました。手を抜いていませんし、そのドレスが美し過ぎるのです。背中が大きく開いた真っ赤なドレスでした。
ロビーの真ん中にピアノが置かれ、講師が深々と礼をした後椅子に腰かけてすぐに演奏が始まりました。私もピアノを習っていたので、有名な曲は知っています。まずはドビュッシーの『月の光』から始まりました。この曲は本当に月の光が差してくるような繊細でロマンティックな曲ですが、メロディーは知らない人も多いかと思います。
しかしながら入居者の皆さんはそのあまりに美しいピアノ曲に、とにかく聞き惚れていました。赤いドレスがまた妖艶で、老人ホームにいることを忘れるほどです。そのほかにもモーツァルトの曲やみんなが知っている「イエスタディワンスモア」などのポピュラー曲もありました。
あっという間の夢のようなピアノ演奏の時間でした。私も涙ぐみそうになりましたが、入居者の皆さんのすすり泣く声も聞こえます。感動して涙するのは、とても素敵なことですね。
老人ホームでのレクリエーションのひとつに、コーラスがあります。サークル活動もありますが、簡単な曲であればレクリエーションとしてみんなで楽しむこともできます。スタッフの中にはピアノを弾ける人もいて、その人の演奏に合わせてみんなで楽しく歌う時間です。
季節に合う曲や『赤とんぼ』などの童謡を歌うことが多いです。歌うことは良い腹筋運動にもなりますし、声を出すとリフレッシュもできます。大きな声で歌うことは体力作りにもつながります。みんなで歌うことで一体感を感じることもできて、メリットが大きいレクリエーションと言えるでしょう。
ピアノ演奏のおかげで、みんなの楽しみが増えるのです。
このように、老人ホームでのピアノ演奏のシーンはいろいろとあります。演者さえいれば、ピアノひとつでできることなので手軽と言えるでしょう。入居者のみんなが笑顔になって感動できるピアノ演奏は素晴らしいです。
これからもいろいろなイベント企画が増えると、施設内も盛り上がりみんなも退屈せずに過ごせることでしょう。